アロマ・ハーブ・薬膳・漢方ライター田中彩
「紅生姜」の名義でハーブ・薬膳・漢方を中心に書くWebライター。植物と昆虫の研究で修士号を取得。農分野で研究員として働いた経験とバイオ系で遺伝子検査や抗体精製などに関わった経験あり。 薬膳コーディネーター、メディカルハーブセラピスト、アロマ&ケアスペシャリスト、紅茶検定中級の資格あり。理系として、研究論文(英語含む)、書籍を参考に執筆するよう心がけている。
漢方薬は体質・症状に合わせて使う薬なので、体質に合わないと副作用が出やすくなります。代表的な副作用は、胃もたれ・食欲不振・下痢・動悸などです。重篤な副作用には、むくみ・だるさ(偽アルドステロン症状)、呼吸困難(間質性肺炎)などがあります。副作用の原因になりやすい生薬と、体に合わない理由について確認しておきましょう。万が一、副作用が出たときは、薬局の薬剤師や病院の医師に相談するのがおすすめです。
漢方薬は自然由来で優しい薬のイメージがあるかもしれませんが、実は副作用を引き起こす可能性があります。漢方薬で副作用が出やすいケースと、西洋薬で生じる副作用との違いを見ていきましょう。
体質・症状に合わない漢方薬を使うと、副作用を生じる可能性があります。漢方の体質診断ができるサイトはいくつかあるので、一度自分の体質を調べてみましょう。また、漢方薬の使用上の注意に関する説明文はよく読み、自分の体質に合うかどうかを確かめてください。
西洋薬の多くは成分がひとつですが、漢方薬はさまざまな生薬の組み合わせからできているのが特徴です。そのため、複数の漢方薬を飲むと、特定の生薬を多くとりすぎてしまい、副作用につながる可能性があります。
合わない漢方薬を使ったときによく見られる5つの副作用と、副作用の原因になりやすい生薬を紹介します。以下の副作用があるなら、漢方の見直しをしてみてください。
胃が弱いときに生薬の地黄(じおう)を服用すると、胃もたれしやすくなります。胃がとても弱い人は、当帰(とうき)と呼ばれる生薬でも胃もたれになるケースも。
生薬の地黄や当帰は人によって胃もたれしやすく、食欲不振が起きるケースがあります。とくに胃腸が弱い人は、地黄に気をつけてください。また、体が冷えているのに体を冷やす生薬を使ったときも、食欲不振を起こしやすくなります。体を冷やす生薬には、黄ごん(おうごん)・黄連(おうれん)・黄柏(おうばく)・石膏(せっこう)などがあります。
下剤として使われる生薬の大黄(だいおう)によって、かえって下痢になるときがあります。体が冷えているのに冷やす生薬を使った際も、下痢に要注意です。冷やす生薬には、黄ごん・黄連・黄柏・石膏などがあります。
体力がない人は、生薬の麻黄(まおう)で動悸が起こる場合があります。麻黄は、咳止めや体の冷えを散らすのに使われます。
生薬の人参(にんじん)・黄耆(おうぎ)・桂皮(けいひ)・桂枝(けいし)で湿疹が出る可能性があります。人参と黄耆は体力を補い、桂皮と桂枝は体を温め巡りをよくします。
桂皮と桂枝は、それぞれシナモンの木の樹皮と枝が使われていますが、桂枝の代わりに桂皮が使われる場合もあります。
漢方薬で、とくに気をつけるべき副作用を3つ挙げます。いずれも重篤な副作用なので、症状が見られたらすぐに漢方薬を飲むのを中止し、病院に相談してください。
重篤な副作用について、詳しく説明します。
「偽アルドステロン症」の症状には、だるさ・筋肉痛・痙攣・むくみ(浮腫)・動悸・口の乾き・頭重感・悪心・吐き気などがあります。原因は、生薬である甘草(かんぞう)のとりすぎです。甘草は多くの漢方薬に含まれるため、複数の漢方薬を使うと、とりすぎてしまう可能性があります。
とくに甘草を多く含む漢方薬は、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)です。芍薬甘草湯は足のつりによく使われますが、毎日飲むのではなく、頓服としての使用をおすすめします。足のつりの根本的な原因は、冷えもしくは血の不足なので、体を温める漢方薬や血を補う漢方薬を使いましょう。
「間質性肺炎」の症状として挙げられるのは、主にせきや呼吸困難です。生薬の柴胡(さいこ)と抗ウイルス作用等のあるインターフェロン製剤を併用すると間質性肺炎になる可能性が高まりが、まれに柴胡のみでも間質性肺炎が起こります。
「肝障害」の代表的な症状といえば、黄疸です。肝障害は特定の生薬で起こるわけではありません。しかし、医薬品は肝臓で代謝されるものが多いため、肝臓が弱っていたり生薬が体に合わなかったりすると、肝障害が起こる可能性があります。
漢方薬が合わない(副作用が出る)主な原因として挙げられるのは、体質に合っていない漢方薬の使用です。漢方薬の間違った使い方の例を紹介しましょう。
地黄は、胃もたれしやすい生薬です。地黄を含む漢方薬を使いたいけれど胃が弱い人は、まず四君子湯や六君子湯など、弱っている胃腸に効果がある漢方薬をしばらく飲んでから使いましょう。
虚証(きょしょう)とは、体に必要な要素が不足している状態で、実証(じっしょう)とは、体に余計な要素を溜め込んでいる状態です。つまり、虚証は体力がなく、実証は体力がある状態を指します。
実証向けの漢方薬は余計な要素を体から排出するため、虚証の人が実証向けの漢方薬を使うと、すでに不足している要素がさらに失われ、不調に陥ってしまうのです。
また、麻黄は体のエネルギーを使って冷えを散らす生薬なので、虚証の人が使うと多くの場合動悸が起こります。
体が冷えているのに冷やす漢方薬を使うと、下痢やだるさなどが起こります。冷え性にはいろいろな種類がありますが、みぞおち・下腹・胸といった体の中心が冷えているときは、冷やす漢方薬はおすすめできません。
副作用と思われる症状が出たら、飲んでいる漢方薬の服用をすぐにやめ、専門家に相談しましょう。相談しやすい専門家と、それぞれの特徴を挙げます。
相談しやすい専門家は、以下のとおりです。
いずれの専門家も副作用には詳しいため、適切な対処法を教えてくれるでしょう。専門家を介さず通販で漢方薬を買う際には、薬のパッケージの説明(裏面)に書かれている、含まれている生薬や向いている体質を確認すると、失敗しにくくなります。とくに、医薬品メーカーの多くは、自社のホームページに漢方の詳しい説明を載せているため、よく読んでから選んでください。万が一、重篤な副作用が出たときは、通販で買った漢方薬の名前を控えて医師にかかりましょう。
漢方薬は、副作用を引き起こす可能性がありますが、自分の体に合った漢方薬を選べばリスクを軽減できるでしょう。漢方の体質診断をおこない、漢方薬の説明をよく読んでから購入してください。漢方薬局や漢方内科では、より精度の高い体質診断をしてもらえます。漢方薬局では、多くの漢方薬を扱っているため、自分にぴったりの漢方薬を見つけやすいでしょう。また、漢方内科では保険が適用されるため、手頃な価格で漢方薬が手に入ります。
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