管理栄養士ライター高村恵美
12年間管理栄養士として病院などに勤務。家族にいつでも"おかえり"が言えるようライターへ転身後は、忙しいひと・働くひとに寄り添うレシピの提供や、健康コラムを数多く執筆。
自分も同じ立場だからこそ「仕事と家庭の両立に悩む女性を応援したい」気持ちが高まり、悩めるママに向けたコラム執筆も行っている。
食欲不振のときは、さっぱりしたレシピで体調管理しましょう。胃腸が疲れているときは、無理をして食べる必要はありませんが、長引くのであれば消化の良い食品を中心に栄養補給が必要になります。
とくに高齢者の低栄養状態が長引くと、体だけでなく心にも悪影響をおよぼしてしまうので深刻な問題です。手軽なコンビニ食品の活用や食べ方の工夫をして、食欲不振でも楽しんで食事ができる日々を目指しましょう。
食欲不振をもたらす原因は1つではなく、老化や生活習慣の乱れ、精神的なストレスなど多岐に渡ります。
消化を司る胃腸の機能が低下すると、飲食物を体内で処理しきれません。結果、「これ以上食べないで」と脳に信号が送られ、食欲不振を招きます。
消化機能の低下は、老化・胃腸の冷え・暴飲暴食などにより起こり、消化機能が低下したまま飲食すると胃もたれや胃痛を生じるケースも。しかし、高齢者は内臓の知覚機能が衰えて痛みを感じにくいため、たとえ胃腸がダメージを受けていても、食欲が低下しているとしか自覚できない可能性もあります。
虫歯や老化により噛む力が低下すると、やわらかい食べ物を好んで食べるようになるため、さらに噛む力が衰える悪循環に陥ります。噛まなくなると、唾液や唾液中に存在する酵素の分泌が不十分になるため、消化や味覚に悪影響をおよぼし、食欲不振を招くのです。
高齢になると、飲み込む力(嚥下機能)が低下して一度にたくさん食べられなくなり、食欲不振の一因になります。
老化や体調不良により嗅覚や味覚の機能が低下すると、食欲を刺激される機会が少なくなるため、食欲不振を招くリスクが高まります。
運動不足の状態はエネルギーを消費しないため、食欲がわきにくくなります。
悲しい出来事があったり、ひどく疲れたりといった急性のストレスにさらされると、一時的に食欲が低下します。一方で、慢性的なストレスがかかると体は常に警戒モードとなり、戦いに備えてエネルギーを温存するため、脂肪を溜め込みやすくなるのです。ストレスから解放された途端に甘い物やお酒が欲しくなったり、暴飲暴食したりするケースがあるので注意しましょう。
口内や食道の粘膜に炎症が生じると、飲食により痛みや出血が起こり、食欲が減退する可能性があります。
私たちの体は、エネルギーがないと生きていけないため、食欲不振になっても数日以内には食欲を取り戻すケースがほとんどです。
しかし、長期間食欲が戻らない場合は、下記に示すような心身のトラブルが発生している可能性があります。低栄養状態が何日も続くと、さらに健康状態が悪化する危険性があるので、早めに病院を受診しましょう。
食欲不振は、食欲を感じないだけで、食事が不要になったわけではありません。無理をして食べるとかえって胃腸に負担をかけてしまうので、食べずに胃腸を休ませてあげる時間が必要です。しかし、長引くのであれば、低栄養を防ぐために栄養を補給する工夫をしましょう。
食欲がないときは「消化の良い食品」を選び、刺激の強い食品(香辛料や、冷た過ぎたり熱過ぎたりする食品)は控えて、胃腸の負担を軽減するのがポイントです。のど越しが良い・冷たい・やわらかいといった食品は、比較的食べやすいでしょう。少量でも栄養価の高い、高カロリー・高タンパク・ビタミン豊富な食べ物が理想的です。
<消化の良い食品(食品の繊維や固がやわらかく、脂肪が控えめ)>
食欲不振の原因により、食べ方のアプローチは変わります。毎日、規則正しくバランスの良い食事を十分に摂れなくても、過度に心配する必要はありません。無理せず、食べられるときに食べましょう。食欲不振のときに食べやすくするためのコツは、下記のとおりです。
キャベツの汁には、MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)という胃粘膜の修復を助ける成分が含まれています。熱に弱い成分なので、生のまま食べるのがおすすめです。
胃もたれによる食欲不振を起こしやすい方は、胃腸に負担をかけやすい会食や揚げ物を食べる際に、千切りキャベツといった生キャベツのメニューを組み合わせて食べると良いでしょう。
仕事で忙しいときや体調不良で自炊が難しいときは、コンビニを利用する日もあるでしょう。コンビニでは、胃に負担をかけにくい下記の食品がおすすめです。しかし、冷たい食品は胃腸を冷やすため、温かい飲み物などと一緒に摂るよう気を付けましょう。
食欲がわかないときは、胃に優しいメニューで栄養補給をしましょう。さっぱりしたメニューというと冷たい食品が多くなりがちですが、温かくてもさっぱりと食べられるレシピをご紹介します。冷たいメニューを食べるときは、温かい物と一緒に食べるのがおすすめです。
やわらかく煮たそうめんに、消化のサポートに役立つ大根おろしと口当たりの良いツナを合わせたさっぱりメニューです。
大根には、糖質・タンパク質・脂質の消化を助ける3つの消化酵素が含まれています。やわらかく煮て食べるのもおすすめですが、大根は熱に弱いので、火を通さないのがポイントです。生で食べると消化のサポート効果が期待できます。
甘酸っぱい味付けで、食欲がないときでも食べやすい一品です。胃粘膜の修復を助けるMMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)の働きを活かすために、キャベツは生で調理します。
繊維のやわらかい白菜をコトコト煮込み、胃粘膜の保護に役立つ牛乳を組み合わせたスープです。隠し味に味噌を加えてさっぱりと仕上げます。
食欲不振の陰には、命に関わる病気が潜んでいる可能性があります。胃・十二指腸潰瘍では、急な吐血がみられたり、慢性膵炎・肝硬変・膵がん・胃がんといった可能性もゼロではありません。
とくに、高齢者は胃痛・腹痛といった体の痛みを感じにくいので、進行した状態で病気が発覚するケースは少なくありません。「食欲不振くらい…」と軽視せず、早めに受診して、早期発見を心がけましょう。
各ブランドの商品一覧をご確認いただけます。