監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
ワセリンは、手荒れした肌を保護して水分が蒸発するのを防ぐ働きがあります。一方で、肌に潤いを与えたり、炎症や傷を治したりする効果はありません。手荒れの原因は、冬場の乾燥はもちろん、水仕事・アルコール消毒をする機会が多いなど、一年を通してさまざま。一度荒れてしまうと、症状が悪化しやすくなり、改善するのに時間がかかるため早めの対処が大切です。ワセリンの使い方やケア方法、ハンドクリームとの違いを知り、潤いのある肌を目指しましょう。
ワセリンは、石油から抽出した炭化水素類を主成分とする皮膚保護剤です。精製した純度によって、黄色ワセリン(精製度が低い)・白色ワセリン(精製度がやや高い)・プロペトやサンホワイト(精製度が高い)などに分けられます。精製度が高くなるほどワセリンの色は白くなり、肌への刺激が少なめに。医薬品や化粧品に広く使用されているワセリンは、手のケアだけでなく、唇の乾燥や固くなったかかと、ボディケアまで幅広い用途で使えます。
ワセリンもハンドクリームも、どちらも保湿を目的としたアイテムですが、特徴や使い方に違いがあります。ワセリンは、石油を精製して得られる物質を主成分とした無香料の皮膚保護剤。肌の表面をコーティングして水分の蒸発を防ぎ、外部からの刺激をやわらげるのが特徴です。
一方、ハンドクリームは、商品によって配合されている成分が異なります。尿素・セラミド・ヒアルロン酸といった保湿成分が配合されているタイプ、香り付きタイプなど種類が豊富です。手荒れの状態に応じて、使い分けるとよいでしょう。
ワセリンの原料が石油と聞くと、肌に悪いイメージを持つかもしれませんが、もともと石油は天然由来成分です。また、精製段階でほとんどの不純物は除去されています。肌内部へは浸透しませんが、肌表面を油分でコーティングし、水分が蒸発を抑えて肌を保湿する効果を発揮。外部の刺激からも肌を守る効果が期待できます。ただし、すでに炎症を起こしている肌に対してワセリンを使用しても、根本的な解決策にはなりません。炎症を抑えたり、傷を治したりする効果はないため、症状にあわせて使用しましょう。
ワセリンには優れた保護効果がありますが、肌に水分を与える働きはありません。塗る前には化粧水や乳液といった基礎化粧品を塗り、しっかりと潤いを与えるのが大切です。また、常温では伸びにくい固形状のため、無理に塗り広げようとすると、摩擦によって肌に刺激を与えてしまう可能性があります。手のひらで少しあたため、やわらかくしてから薄く塗り広げましょう。
肌に水分を補う働きがないため、先に化粧水や乳液で肌に潤いを与えてから、ワセリンで肌にフタをしましょう。また、たくさん塗るとベタついてしまうため、薄く塗り広げるのが大切です。使用前に手のひらで少しあたためると、伸びがよくなり、ムラなく塗布できます。
手荒れを集中的にケアしたいときには、日中のハンドケアにプラスして、ナイトパックがおすすめ。用意するアイテムは、「基礎化粧品」「ワセリン」「シルク素材の手袋(コットン素材でも可)」の3つです。
ケア方法は、日中のケア(手洗い→基礎化粧品で肌を整える→ワセリンを薄く塗り広げる)をおこなったあと、手袋を着用して就寝するだけといたってシンプルです。寝ている間に手袋を着用すると、肌の表面から水分が蒸発するのを防ぎ、荒れた肌を保護できます。ワセリンのベタつきが気になって日中ケアできない方は、まず夜のケアを取り入れてみるとよいでしょう。
さらにワンランク上のハンドケアをしたい方は、日中もシルクやコットン素材の手袋を着用してみてください。プロのハンドモデルも実践している方法で、紫外線や摩擦といった刺激から肌を守ってくれます。
ワセリンは、基本的に肌に優しい成分です。ただし、使用する際にはいくつか注意があります。肌に直接塗るアイテムのため、心配な方はパッチテストを行い、顔に使用するときは純度が高い製品を選びましょう。開封後は、使用期限内に使い切ってください。
ワセリンは副作用が少ないとされていますが、肌の状態や体質によっては刺激やかぶれを引き起こす場合があります。、アトピー性皮膚炎など肌に炎症がある方、過去に塗り薬でかぶれやアレルギー症状があらわれた経験がある方は、念のためパッチテストをおこないましょう。二の腕の内側にワセリンを少量塗り、24時間程度様子を見て、赤みやかゆみが出ないかを確認してください。
顔に使用する際は、精製度が高く不純物が少ない「白色ワセリン」を選びましょう。ドラッグストアやオンラインストアで購入できます。赤ちゃんや敏感肌の方は、さらに純度が高い「プロペト(白色ワセリンよりも高精製度)」や「サンホワイト(プロペトよりも高精製度)」を使用するとよいでしょう。
ワセリンを塗りすぎると、ベタつきやテカリの原因になります。一度にたくさん塗る必要はありません。少量から始めて、足りないと感じたら少しずつ足していくと、つけすぎを防げます。
基本的に酸化や腐敗が起こりにくいため、多くの製品には防腐剤が添加されていません。しかし、汚れた手で扱うと、雑菌が混入する可能性があります。清潔な手で使用する、スパチュラ(へら)で容器から取る、チューブ型の製品を使用するといった工夫をしましょう。また、劣化を防ぐために、直射日光や高温多湿を避けて、フタをしっかり閉めて保管してください。開封後は、使用期限を目安に使い切りましょう。
赤ニキビは、毛穴の中で炎症が起きている状態です。ワセリンを塗ると、皮脂などが毛穴に詰まりやすくなってしまい、炎症を悪化させる可能性があります。赤ニキビが気になるときは使用を控え、皮膚科医に相談しましょう。
ワセリンは、肌の保護に役立つアイテムですが、炎症を抑えたり傷を治したりする効果はありません。ひどい手荒れで悩んでいる方は、ワセリンとハンドクリームを症状や肌の状態に応じて使い分けるのがおすすめです。とくに尿素が配合されているタイプは、角質層の水分を保持して乾燥を防ぐ効果が期待できます。また、古い角質を剥がして皮膚をやわらかくする角質溶解剥離作用により、潤いのある肌へと導く効果も期待できるでしょう。手荒れが気になったときはもちろん、お風呂上がりや就寝前などにも使用して、健やかな肌を目指しませんか。
ワセリンは肌から水分が蒸発するのを防ぐ優れた効果が期待できます。特に手荒れが気になるときにはおすすめのスキンケアアイテムです。
一方で、ワセリンには肌の炎症を改善したり、肌の直接的に水分を補給したりする効果は期待できません。肌の炎症や乾燥がひどいときには、ハンドクリームや市販薬を使用しましょう。
手荒れにはさまざまな原因がありますが、湿疹や強いかゆみなどが続くときは医療機関での治療が必要になる場合もあります。ワセリンなどを使用したセルフケアでも症状が改善しない場合には早めに皮膚科を受診しましょう。特に、水仕事をする機会が多い方は治療が必要になる手荒れを引き起こすケースは思いのほか少なくないため注意が必要です。
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