発熱の基準は参考情報ではありますが、37.5℃以上とされています。しかし、子どもを病院へ連れて行くか、学校や勤務先を休むか迷ったら、体温ではなく本人の状態・具合を元に判断しましょう。正しい方法で測定し平熱を知っておくと、もしものときに役立ちます。体温は年齢によって違い、個人差もあるので目安に過ぎません。
いつもより体温が高いときには、休養を取るのが何よりです。発熱による脱水を起こさないよう水分を摂取し、消化のよい食事をしてエネルギーを補給しましょう。
発熱は何度からか?
参考情報ではありますが、2013年に厚生労働省より発出された通知では、発熱は体温が37.5℃以上、高熱は体温が38.0℃以上を示した状態をいうとされています。
しかし、平熱は人によって千差万別。37.5℃未満で発熱だと感じる人がいる一方、37.5℃以上でもまったく問題ない人もいます。
平熱が低い人は、37.5℃未満でも普段より1℃以上体温が高いときは「発熱している」と考えてよいでしょう。また、平熱が高い人でも37.5℃を超えたときには注意が必要です。
発熱はなぜ起こる?
発熱する理由は、基本的には体を守るためです。
人間の体には、環境や体内の変化に応じて、生命維持に必要な機能を正常に保つ「恒常性」と呼ばれるはたらきがあります。暑くても寒くても、体温がほぼ同じに保たれているのは、恒常性のためです。
感染症に罹患すると、恒常性を乱す細菌・ウイルスを排除する過程で発熱しますが、自己免疫疾患やがんによる発熱の詳細は解明されていません。
感染症
体の中に細菌やウイルスが入ってくると、まず白血球やマクロファージといった免疫細胞がサイトカインを作ります。サイトカインのはたらきで、侵入情報が脳に伝わり、体温を上げるように指令が伝導するのです。体温が上昇すると、免疫細胞は元気になり細菌・ウイルスを攻撃します。
また細菌・ウイルスは平熱あたりで最も増殖しますが、体温が上がり体内酵素のはたらきが活発になると、ほとんど増殖できなくなるとされています。
自己免疫疾患やがん
感染症のほか、関節リウマチなどの自己免疫疾患やがんでも発熱します。自己免疫疾患は免疫機能の異常が、がんはがん細胞・免疫細胞が産生するサイトカインの関与まではわかっていますが、詳しい理由は不明です。
平熱・微熱・発熱・高熱の基準は大人と子どもで違う?
発熱・高熱の基準は、参考情報のため、大人も子どもも同じです。しかしながら、平熱は年齢によって違います。子どもの平熱はやや高め、生理機能が低下する高齢者はやや低めです。微熱の基準はあいまいで「平熱が何度か」によって違います。
大人の平熱と微熱
平熱には個人差があり、年齢・食事・運動・感情の変化などが影響しています。微熱は平熱を基準に考えましょう。
大人の平熱
日本人の平均体温は、36.89°Cもしくは36.67°Cとの報告があるため、平熱はおおよそ36°C台後半と考えましょう。体温は、外部環境や時刻の変化にも影響を受け、幅は1°C弱です。最も低いのは早朝、高いのは夕方と言われています。
大人の微熱
平熱以上発熱未満が微熱といえるでしょう。
微熱の原因は、主に月経周期やストレスです。排卵すると体温は約0.6℃上昇し、月経まで高温期は継続します。熱に思い当たる原因がないときには、ストレスによる「心因性発熱」を疑ってみましょう。ストレスが加わると交感神経のはたらきは活発になり、脂肪を燃やして熱を産生するはたらきのある褐色脂肪細胞が刺激され、体温は上昇します。
<大人の平熱(参考情報)>
- ・ 平熱:35℃後半~37℃後半
子どもの平熱と微熱
子どもの微熱は、大人と同じように「平熱が何度か」を基準に考えましょう。普段から体温を測定して平熱を知っておくと、もしものときに役立ちます。
子どもが体温測定を嫌がるために、時間のかからない「予測式」体温計を使っている人がいるかもしれませんが、表示される値は実際の体温ではなく計算値のため注意が必要です。可能な限り、確実性の高い実測値で計測できる製品の使用をおすすめします。子どもの平熱については、以下の値が正常値の参考になります。
<子どもの平熱(参考情報)>
- ・ 乳児(1歳まで):36.3℃~37.4℃
- ・ 幼児(年長さんまで):36.5℃~37.4℃
- ・ 小学生以上:36.5℃~37.3℃
参照:発熱について/独立行政法人国立病院機構新潟病院
熱の出方でわかる病気はある?
発熱を伴う病気には、体温変化に特徴のあるタイプがあります。以前は診断の手がかりにされていましたが、解熱剤や抗菌剤が使われるようになってから、典型的な特徴を見る機会は減少しました。たとえば自己免疫疾患の関節リウマチは、周期熱型を示す代表的な病気です。
稽留熱(けいりゅうねつ)
稽留熱は、1日の体温の変動が1℃以内で38℃以上の高熱が続く状態の熱です。肺炎球菌による肺炎・髄膜炎・脳炎で見られます。
間欠熱(かんけつねつ)
1日の体温差が1℃以上、一定間隔で高熱と平熱が交互にあらわれる熱型です。蚊を介するマラリア、ダニやシラミによる回帰熱がよく知られています。子ども特有であげられるのは、溶連菌感染症です。医薬品のアレルギーでも起こります。
弛張熱(しちょうねつ)
1日の体温差が1℃以上で、平熱に下がらない熱型です。間欠熱と同じ病気で起こるほか、感染性心内膜炎や腎盂腎炎でも見られます。
周期熱(しゅうきねつ)
平熱と発熱を周期的に繰り返す熱型です。周期熱を示す病気にはマラリア・家族性地中海熱・関節リウマチがあります。
波状熱(はじょうねつ)
平熱と発熱を不規則に繰り返すのが波状熱です。家畜が媒介する感染症のブルセラ症やマラリア(三日熱、四日熱)のほか、腎結石や胆道閉鎖症があります。
二峰性発熱(にほうせいはつねつ)
初めの発熱がいったん平熱まで下がった後に、再度発熱する熱型です。代表的な病気には、麻疹や蚊が媒介するデング熱があります。
参照:熱型と鑑別診断/国立大学法人旭川医科大学正しい体温測定方法を知っている?
測定する場所によって体温は変わってくるため、正しい測定方法を身につける必要があります。人間の体温は体の中心に近いほど高く安定しており、末端や表面ほど環境の影響を受けやすいのです。また、季節や気温による変化にも注意しましょう。
「平熱が低い」と思っている人はひょっとすると測定方法を間違えているかもしれません。測定方法を確認してみてください。
<正しい体温測定方法のポイント>
- ・ 腕を上げて体温計を斜め下方向から押し上げる
- ・ 体温計の先端が脇の中心になるようにはさむ
- ・ 肘を脇腹に密着させ、脇をしっかり閉じる
- ・ 汗をかいているときは、乾いたタオルで拭き取る
発熱で受診する目安は?事前に電話連絡を
体温が38℃以上なら、なんらかの病気であると考えるべきです。また41.5℃以上の場合は、脳へのダメージも考えられるので、早めに受診しましょう。新型コロナウイルス感染症などの感染症に罹患して発熱している可能性もあるので、事前に電話で連絡してください。
発熱時に注意が必要な人
以下の人は、重い病気が隠れている可能性や重症化リスクが高いため、我慢せずなるべく早めに受診しましょう。
<発熱時に注意が必要な人>
- ・ 高齢者
- ・ 免疫抑制状態の人(HIV患者、免疫抑制剤使用中、がん治療中など)
- ・ 基礎疾患のある人(慢性呼吸器疾患、糖尿病、心疾患など)
- ・ 埋め込み型医療機器のある人(中心静脈カテーテル、ペースメーカーなど)
発熱時に注意が必要な症状
発熱のほか、下記の症状のある場合は、重い病気が隠れているケースもあるため、なるべく早く受診しましょう。
<注意が必要な症状>
- ・ 高熱が続いている
- ・ 意識状態がよくない(ボーッとするなど)
- ・ 寒気があり、がたがたと震える
- ・ 明らかに普段より血圧が低い
- ・ 倦怠感がある
- ・ 吐き気がある
- ・ 呼吸が苦しい
- ・ 痛みがある
- ・ 水分や食事が取れない
- ・ 尿が出ない
赤ちゃんの発熱時
赤ちゃんの機嫌をよく見ましょう。すごく不機嫌・ぐったりしている、母乳やミルクの飲みが悪い、呼吸が苦しそうなときは、すぐに受診が必要です。微熱程度で機嫌がよければ、半日くらい様子を見て、次第に熱が上がるときには受診しましょう。
子どもがインフルエンザで学校に行けない期間は?
子どもは感染症の種類によって、学校保健安全法で出席停止期間が定められています。インフルエンザでの目安期間は、発症後5日間経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまでです。
抗ウイルス薬の服用で、早めに解熱しても感染力が残っているため、出席停止期間どおり欠席してください。通園・通学の再開は、かかりつけ医や学校と相談しましょう。
感染症の発熱は、体へ侵入した細菌やウイルスを排除しようとするはたらきなので、安易に解熱剤を使わず、安静にして休養を取りましょう。体力があると、十分な睡眠だけでも回復するケースがあります。熱を下げようと発汗するため、水分補給で脱水を防ぎ、消化のよい食事でエネルギーをつけ、経過観察しましょう。
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