黄砂とは
黄砂とは、砂漠地帯から風によって巻き上げられた砂塵が上空の風に乗り、広い地域まで浮遊・降下する自然現象です。中国大陸内陸部のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠、黄土地帯から舞い上がった砂や塵が、偏西風に乗って日本まで到達します。日本で観測される黄砂は、最大で直径約4ミクロンです。
黄砂発生には、風の強さ・地表面の状態・上空の風の流れといった多数の気象条件が関係しています。粒子の小さな黄砂は遠くまで運ばれ、太平洋を越えて北米大陸やグリーンランドにまで到達した記録もあるほどです。
参照:「黄砂に関する基礎知識」/気象庁
黄砂が多く観測される時期
日本で黄砂が多く観測されるのは、春先の3月から5月までです。2月から徐々に黄砂発生が増加し始め、4月にピークを迎えます。
春に黄砂が増加するのは、「雪解けにより地表が乾燥する」「植物が生育していない」といった砂塵の舞い上がる条件が整うためです。さらに、春は偏西風が生じやすく、日本まで黄砂が到達しやすくなります。
日本における2023年の黄砂観測日数は14日、黄砂観測のべ日数は40日でした。気象庁が行っている1967~2023年の統計によると、黄砂観測日数の変動は年によって大きく異なっており、有意な増減の変化は見られていません。
参照:「黄砂観測日数の経年変化」/気象庁
黄砂を構成する物質
黄砂を構成する主な物質は、石英や長石といった岩石を形作る鉱物と、雲母・カオリナイト・緑泥石などの粘土鉱物が中心です。
また、上空を移動する過程でアンモニウムイオン・硫酸イオン・硝酸イオンといった、本来の土壌には含まれていない成分が混ざり込むケースもあります。もとの土壌になかった成分が混ざる理由として、移動途中で工場や自動車から排出される大気汚染物質を取り込んでいる可能性が考えられるでしょう。
黄砂を観測する方法
黄砂の観測方法は、目視と測器の2つです。目視による記録は東京と大阪の観測拠点で行われ、科学的な数値データの収集はスカイラジオメーターや気象衛星「ひまわり」で実施されています。観測手法の組み合わせにより、黄砂をより正確に把握しているのです。
東京・大阪における目視
目視による黄砂の観測地点は、東京と大阪の2箇所です。観測者が空を見上げて大気の状態を確認し、黄砂の飛来状況を判断しています。
観測時には、観測時刻や視界の状況(どれくらい遠くまで景色が見えるか)をチェックし、データを記録しています。
測器を使用した観測
気象庁では、地上に設置されたスカイラジオメーターと、空から観測する気象衛星を使用し、黄砂をはじめとしたエーロゾル(大気中の固体・液体粒子)を観測しています。
スカイラジオメーターは、黄砂の物質量や粒子サイズごとの分布といった詳細なデータ取得が可能です。また、静止気象衛星「ひまわり」では、上空から黄砂の分布状況を広範囲にわたって観測できます。
黄砂による生活への影響
黄砂は呼吸器・循環器系疾患やアレルギー症状といった健康面や、農作物生育に悪影響を及ぼすおそれがあります。また、洗濯物や車が汚れたり、視界不良による交通障害が発生したりする可能性も。日本で深刻な影響が出るケースは少ないですが、黄砂の観測量が多い時期は注意しましょう。
健康や農作物に影響を及ぼす可能性がある
黄砂は人体の健康と農業に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
黄砂の微細な粒子が気管支に入り込むと、呼吸器・循環器系疾患の症状を悪化させるおそれがあります。アレルギーを持っている方は、目のかゆみや鼻水、皮膚の炎症といった症状が現れるケースも。
農作物における黄砂の影響も看過できません。農作物に黄砂が付着すると、生育に支障をきたすおそれがあります。さらに、黄砂を含んだ雨が降って土壌環境が変化するケースもあるのです。
洗濯物や車が汚れる
黄砂が屋外に干した洗濯物や駐車している車に付着すると、洗濯し直しや洗車の手間がかかるでしょう。
また黄砂により洗濯物が汚れると、黄砂に含まれる金属成分によって黄ばみの原因になります。微細な粒子が布地の繊維に入り込み、生地を傷めるおそれも。
さらに黄砂が車体に付着すると、見た目が悪くなるうえに、細かい粒子がボディに傷をつける可能性もあります。
視界が悪化する
大量の黄砂が大気中に浮遊すると、視界が悪化して交通の安全性に影響が出ます。視界の悪化で視認性が低下すると、交通事故のリスクが高まるでしょう。また、飛行機の欠航や道路交通への影響も考えられます。
ただし日本に飛来する黄砂は、視界を著しく妨げるほどの濃度には至らないケースが一般的です。
黄砂による影響を抑えるための対策
黄砂から身を守るには、適切な予防策を講じる必要があります。不要な外出は控え、外出時にはマスクを着用しましょう。また室内では窓の開閉を最小限に抑え、空気清浄機を活用して空気をきれいに保つのが大切です。
予防策を行えば、黄砂による生活への影響を軽減できます。
不要な外出を控える
黄砂が飛来している期間は、できる限り外出を控えましょう。普段屋外で運動する習慣がある方は、黄砂の飛来時期にジョギングといった大きな呼吸を伴う運動をすると、呼吸器系へ負担がかかってしまいます。また子どもやお年寄り、呼吸器・循環器系に持病を持つ方は黄砂の影響を受けやすいため、外出時はとくに注意しましょう。
外出先から帰ってきたときは、家に入る前に衣服や髪についた黄砂をよく払い落とし、手洗いやうがいをしっかり行うのも大切です。
窓の開閉を減らして空気清浄機を使用する
黄砂飛来時期には室内への侵入を防ぐため、窓やドアの開閉を最小限に抑える必要があります。空気の入れ替えは重要ですが、黄砂の多い時期は換気によって室内を汚してしまうおそれがあるため、注意が必要です。
また空気清浄機を活用すれば、空気中の黄砂を効率的に除去できます。フィルターは定期的に掃除するのが大切です。
ただし対策を講じても、完全に黄砂の侵入を防ぐのは難しいでしょう。掃除機やモップがけをこまめに行い、清潔な室内環境を維持できるよう心がけてください。
外出時はマスクを着用する
黄砂が観測される期間中の外出には、必ずマスクの着用を心がけましょう。マスクを選ぶ際は自分の顔にフィットするか確認し、隙間から黄砂が入り込まないように装着してください。
黄砂の吸い込みをより防ぎたいときは、医療用マスクがおすすめです。ただし呼吸のしづらさを感じる場合があるので、長時間の着用は避けた方がよいでしょう。
黄砂情報や予報を確認する方法
黄砂情報や予報の確認は、気象庁・環境省のWebサイトで確認できます。気象庁のWebサイトでは今後の黄砂予測を地図で確認でき、環境省のWebサイトでは黄砂濃度をリアルタイムで確認可能です。
黄砂情報をチェックして早めに対策を講じれば、生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。
黄砂と似ているPM2.5
PM2.5は特定の物質を示すわけではなく、直径2.5マイクロメートル以下の微細な粒子全般を指します。主な物質は炭素・硝酸塩・硫酸塩や、ケイ素やアルミニウムといった無機元素です。発生源は煙や粉塵を発生する施設や自動車の排気ガス、火山の噴煙など、多岐にわたります。
PM2.5は小さく、肺の奥まで到達しやすいため、健康に悪影響を及ぼすおそれも。黄砂と同様に、マスクの着用や外出を控えるといった対策が推奨されています。
各ブランドの商品一覧をご確認いただけます。