看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
インフルエンザの治療薬である「抗インフルエンザウイルス薬」は、治療と予防投与に使われます。種類は複数ありますが、オセルタミビルリン酸塩やザナミビル水和物などが一般的です。症状のある期間を短くし、重症化を予防する効果があります。市販はされておらず、医療機関の受診が必要です。薬の在庫不足が話題になりましたが、処方されるかは近くの医療機関に確認してみてください。セルフケアも取り入れながら、流行シーズンを乗り切りましょう。
抗インフルエンザウイルス薬は、インフルエンザの治療と予防投与に使われます。市販はされておらず、医師の処方が必要です。使用による効果は、症状が出始めてからの時間や病状によって異なります。
抗インフルエンザウイルス薬は症状のある期間を短くし、鼻や喉から排出されるウイルスの量を減らす効果が期待できます。ウイルスは感染初期に急増するため、発症後48時間以内での使用が望ましいです。発症後48時間を過ぎると十分な効果が期待できないとされています。
予防投与は、感染した人に接触した後、48時間(リレンザは36時間)以内での使用が推奨されています。インフルエンザウイルスの増殖を抑え、発症や重症化の予防に有効とされているためです。ただし、予防投与はすべての方に適用されるわけではありません。また、予防投与は健康保険の適用外となる点に注意が必要です。原則、以下に当てはまる方が対象となりますが、医師の判断によって予防投与が可能な場合もあります。
抗インフルエンザウイルス薬の種類は、以下の表のとおりです。薬を使用するかどうかは医師の診断によります。また「バロキサビル マルボキシル」は、小児および重症患者への積極的な使用は推奨されていません。予防で使用できるのは、オセルタミビルリン酸塩・ザナミビル水和物・ラニナミビルオクタン酸エステル水和物・バロキサビル マルボキシルです。
抗インフルエンザウイルス薬を服用した後は、事故に注意しましょう。急に走り出す、部屋から飛び出そうとするなどの異常行動が報告されているためです。しかし、薬の服用や種類にかかわらず、異常行動があらわれるケースも報告されています。とくに、小児や未成年男性での報告が多く、発熱から2日以内での発現が多いようです。行動の例と、事故防止対策を見ていきましょう。
異常行動の例は以下のとおりです。発熱から2日間はとくに注意してください。
事故の防止策の例は以下のとおりです。就寝中も含め注意しましょう。
今シーズンでは、2024年第52週の定点当たり報告数がもっとも高く、64.39(患者報告数317,812)でした。定点当たり報告数とは、選ばれた医療機関(定点)から報告された患者数を、報告した医療機関の数で割った値です。12月23日~12月29日まで全国の医療機関を受診した患者数は、約258.5万人と推計されています。
2025年第5週の定点当たり報告数は5.87(患者報告数28,943)となり、前の週の定点当たり報告数11.06より減少していました。1月27日~2月2日まで全国の医療機関を受診した患者数は、推計約19.4万人です。流行のピークは過ぎたと考えられますが、春先までは注意しなければなりません。
インフルエンザにかかったときにできる、薬の服用以外の方法を紹介します。安静にしてゆっくり休む、こまめに水分をとる、栄養価の高い食べ物をとるといった方法でセルフケアしましょう。
体力を回復させるには、安静にしてゆっくり休むのが大事です。発熱時は悪寒を伴うため、掛け物を増やしたり衣類を調整したりしてみてください。汗をたくさんかいたときは、着替えもおこないましょう。
高熱でたくさん汗をかくと、脱水症状を起こす可能性があります。こまめに水分を補給しましょう。常温の水やスポーツドリンクがおすすめです。いつでも飲めるように、枕元においておくとよいでしょう。
ウイルスと戦うための免疫力を高めるには、消化がよく栄養価の高い食事をとりましょう。梅がゆや卵がゆ、うどん、野菜スープがおすすめです。脂肪分の高い食べ物は胃腸に負担をかけるため、控えた方がよいでしょう。食欲がないときは、喉越しのよい食べ物を選んでみてください。プリンやゼリー、すりおろしたリンゴでも栄養が補えます。ビタミン類を含んだ栄養ドリンクやゼリー飲料を利用するのもよいでしょう。
インフルエンザウイルスは乾燥した環境を好みます。ウイルスが増殖しやすくなるため、加湿を心がけましょう。加湿目安は湿度50~60%です。
咳やくしゃみがあるときは、周囲の方にうつさないよう、咳エチケットを心がけてください。インフルエンザのおもな感染経路は、飛沫感染です。咳やくしゃみを他の方に向けて発しない、不織布マスクをする、鼻水・痰を含んだティッシュはすぐに捨てるなどを守りましょう。飛沫や痰に触れたときは、すぐに手洗いするのも大事です。
家族がインフルエンザにかかったときは、うつらないように対策をとりましょう。看病をするときは、以下を心がけてください。
抗インフルエンザ薬は、インフルエンザの治療や予防に使用できる薬です。つらい症状のある期間を短縮し、重症化を予防する効果が期待できます。発症から48時間以内で服用するのが重要であるため、受診のタイミングに注意しましょう。高熱が続く、呼吸苦がある、意識がもうろうとしているといった症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
妊婦さんは、赤ちゃんへの影響が心配になる場合もあるかもしれません。重症化を防ぐには適切に治療を受けるのが大事です。妊娠中でも使用できる薬があるので、インフルエンザが疑われるときは、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
参照:妊娠中のお薬Q&A/国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
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