看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
ノロウイルスによる食中毒を予防するには、ウイルスに関する正しい知識を身につけ、対策をとるのが重要です。感染経路はおもに経口感染であるため、食品や調理器具の取り扱い、調理法に注意しましょう。また、感染した人の嘔吐物やふん便に触れた後に発症するケースも少なくありません。十分な手洗い、食品の中心部までの加熱、家庭用塩素系漂白剤を用いての消毒が効果的。お世話をする人自身も感染しないように対策しましょう。
ノロウイルスは食中毒を引き起こすウイルスで、冬期間に発生件数が増加します。潜伏期間は24~48時間程度で、感染力が強いため注意が必要です。ウイルスの名前の由来や特徴を探っていきましょう。
ノロウイルスは1968年(昭和43年)に、アメリカのオハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した際に検出されました。のちに「小型球形ウイルス」と呼ばれるようになり、2002年に国際ウイルス命名委員会によってノロウイルスと命名されています。「ノロ」はノーウォークの地名に由来しており、世界で統一して使用されるようになりました。
ノロウイルスの流行シーズンは、毎年11月から2月です。ノロウイルスが付着した手で調理したり、食品を食べたりして発症します。感染力が非常に強く、集団発生を起こしやすいため注意しましょう。2023年の月別患者数は表のとおりです。
2023年におけるノロウイルス患者数の合計は5,502名でした。原因施設別に見ると、飲食店60.0%、次いで仕出し屋16.3%、製造所10.8%です。飲食店や食品を取り扱う場所において、食中毒の発生がとくに多いのがわかります。
ノロウイルスのおもな症状は、吐き気や嘔吐、下痢で、37~38℃程度の発熱が見られるときもあります。感染してから発症するまでは、24~48時間程度です。通常は1~2日で軽快しますが、持病のある人や高齢者、乳幼児は重症化するケースも。牡蠣由来のノロウイルスは、症状が消失した後も3~7日程度は便に排出されます。
ノロウイルスのおもな感染経路は、「経口感染」「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の4つです。とくに多いのが「経口感染」で、牡蠣といった二枚貝を生または加熱不十分で食べたときによく起こります。貝の生息域がノロウイルスに汚染されていると、体内に蓄積するようです。経口感染を防ぐには、十分な加熱処理を心がける必要があります。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスを病原体とした胃腸炎の総称です。原因となる病原体は病原性大腸菌やサルモネラなどの細菌、ノロウイルスやロタウイルスといったウイルスです。冬場はノロウイルス、春先はロタウイルスの感染が増加します。 ロタウイルスによる感染症は乳幼児で感染が広がりやすいものの、予防には乳児向けのワクチン接種が利用可能です。一方で、ノロウイルスのワクチンは未だ開発されていません。
ノロウイルスによる食中毒を防ぐには、日常生活での予防が欠かせません。「持ち込まない・つけない・やっつける・ひろげない」をポイントに対策をとりましょう。
調理する人が感染している場合、調理した食品を介して感染する恐れがあります。腹痛や下痢があるときは、調理に関する作業は控えましょう。また、ノロウイルスを持ち込まないために、普段から以下の点に注意してください。
食品や食器、調理器具にノロウイルスをつけないようにしましょう。調理などをおこなう前は丁寧に手を洗うようにしてください。
一般的なウイルスは熱に弱いとされています。食品に付いたノロウイルスの活性を失わせるために、十分に加熱してください。調理器具も消毒して使用しましょう。消毒する際は「家庭用の塩素系漂白剤を使用した消毒液の作り方」をご覧ください。
周囲の人がノロウイルスに感染したら、感染を広げないための対策が欠かせません。食器や生活環境の消毒、感染した人の嘔吐物・ふん便の処理を適切におこないましょう。
ノロウイルスの感染が疑われるときは、二次感染を防がなければなりません。症状があるときは医療機関を受診し、ノロウイルスと診断されたときは職場や学校に連絡してください。
また、ノロウイルスは、症状が消失した後も3~7日程度は便から排出されます。手洗いを継続し、感染を広げないようにしましょう。
『おもな病因別に見た患者数の推移「全体の食中毒患者数の年次推移」』によると、2023年(令和5年)におけるノロウイルスの食中毒患者数は5,502人で1位でした。調査からわかるように、ノロウイルスは大規模な食中毒になりやすいため注意が必要です。健康管理や作業前の手洗い、調理器具の消毒といった対策を普段から心がけましょう。
ノロウイルスは、感染症法上5類感染症(定点把握対象)に位置づけられ、定点医療機関から毎週患者数が報告される感染症です。「持ち込まない」「やっつける」「つけない」「ひろげない」の4つのポイントを意識して、感染から家族を守りましょう。
参照:令和5年食中毒発生状況.資料2.p31/厚生労働省
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