管理栄養士ライター高村恵美
12年間管理栄養士として病院などに勤務。家族にいつでも"おかえり"が言えるようライターへ転身後は、忙しいひと・働くひとに寄り添うレシピの提供や、健康コラムを数多く執筆。
自分も同じ立場だからこそ「仕事と家庭の両立に悩む女性を応援したい」気持ちが高まり、悩めるママに向けたコラム執筆も行っている。
「内臓脂肪が多い」と指摘されて、食べ物から見直そうと考えている人は多いのではないでしょうか。内臓脂肪を落とすには、内臓脂肪が増えてしまう原因や、つきやすい食べ物を理解する必要があります。本記事を読んで、しっかり学んでいきましょう。
内臓脂肪が増えると体にどのような影響を与えるのかや、外食やコンビニ食が多い方に向けた管理栄養士による食事のアドバイスもしているので、参考にしてみてください。
内臓脂肪とは、内臓の周囲にある脂肪細胞をいいます。内臓脂肪のうち、大部分を占めているのは、中性脂肪(トリグリセライド)です。
内臓脂肪が増えると、つぎの項目の数値が上がりやすいです。
● 体重
● 血圧
● 血糖
● LDL(悪玉)コレステロール
● 中性脂肪(トリグリセライド)
内臓脂肪の増えすぎは、肥満の一因です。肥満には、おもに「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2タイプがあります。肥満は、健康にあらゆる悪影響をおよぼします。
摂取したエネルギー量に対して、消費するエネルギー量が少ない場合に、内臓脂肪は蓄えられます。内臓脂肪が増える具体的な原因は、以下のとおりです。
食生活や食習慣によってエネルギー過多になりやすい、主な原因をご紹介します。
お酒に含まれるアルコールには、脳に作用して食欲を増進させる働きがあります。お酒自体のエネルギーに加えて、食べ物のエネルギーも摂り過ぎがちなので、注意が必要です。
ジュースやケーキ・まんじゅう・菓子パンといった甘い食品は、エネルギー源となる糖質が多いので、摂り過ぎると脂肪として蓄えられます。
とくに、果汁100%のジュースや砂糖入りの甘い飲料は、噛んだり消化したりする必要がないため、吸収スピードが早いのです。そのため、血糖値が上がりやすく、脂肪として蓄えられやすい性質があります。
消費エネルギー量が少ない生活では、飲食によって摂取したエネルギーを消費しきれません。余ったエネルギーは、脂肪として蓄えられます。消費エネルギーが少ないおもな原因は、以下のとおりです。
「運動習慣がない」「活動量が少ない」といった場合は、内臓脂肪が増えやすい傾向にあります。デスクワーク・車移動・エレベーターの使用が多いといった方は、要注意です。
加齢や閉経により、基礎代謝量が低下します。基礎代謝とは、安静にしていても生命を維持するために最低限必要なエネルギー代謝量です。
とくに女性は、糖や脂質の代謝や内臓脂肪の燃焼を担う「女性ホルモン」の分泌量が閉経後に著しく減少します。食事量は変わらなくても、閉経後は内臓脂肪が増えやすいのです。
私たちはストレスを感じると、体内で「コルチゾール(ストレスホルモン)」が分泌されます。すると、コルチゾールの働きによって、血糖値が上がるのです。さらに、上がった血糖値を下げるために「インスリン(肥満ホルモン)」が分泌されます。インスリンは、脂肪を溜め込む働きがあるため、内臓脂肪が増えやすいのです。
短時間の睡眠は、食欲やストレスの増大・運動量の減少をもたらし、肥満のリスクを上げると示唆されています。
海外の研究によると、睡眠時間が5~6時間の人は、体重増加のリスクが50%も増加するとの報告があるのです。
内臓脂肪を減らすためには、生活習慣の全体的な見直しが必要です。見直しのポイントを解説します。
「運動習慣をつくる」「エレベーターを使わず階段を使う」「近所の用事は車を使わずに歩く」といった心がけで消費エネルギー量を増やせます。
毎日7~9時間の睡眠時間の確保と良眠の心がけにより、内臓脂肪の減少が期待できます。睡眠の質を上げるポイントは以下のとおりです。
● 部屋を暗くする
● ゆったりとした服装で寝る
● 毎日同じ時間に寝る
● 起床後に、朝日を浴びる
● 寝室温度を快適にする
● 就寝前にテレビやスマートフォンの画面を見ない
食事からのエネルギーを摂り過ぎている場合は、食事内容を見直して、摂取エネルギー量を減らしましょう。食事改善のポイントは、以下のとおりです。
食事の際は、食物繊維を含む野菜類やキノコ類から先に食べましょう。つぎに摂取する糖質や脂質の吸収スピードを遅くして、血糖値の上昇を抑えられます。
よく噛んで食べると、満腹中枢を刺激して食べ過ぎを防げます。一口につき30回が目安です。
糖質を控えると、摂取エネルギーが減ります。また、食事の全体量も減る傾向があるのです。
活動に必要なエネルギーが不足すると、体内に蓄積された脂肪を消費してエネルギー源とするため、内臓脂肪の減少が期待できます。
しかし、過度な糖質制限は栄養不足を招くリスクがあるため、完全に糖質を除去するのはおすすめしません。
摂取エネルギーを抑えるには、腹八分目の意識が大切です。満腹になる前に箸をおいて、歯を磨いてしまうと、効果的に食べ過ぎを防げるでしょう。
水分補給は、エネルギーが少ない水やお茶といった無糖の飲み物にしましょう。
お酒を飲む場合は、適量を心がけましょう。
適量とされるお酒の1日分の目安量は、以下のとおりです。
● ビール 500ml(中瓶1本)
● ワイン 240ml(グラス2杯)
● 日本酒 180ml(1合)
● 焼酎 90ml(0.5合)
● ウイスキー 60ml(ダブル1杯)
お肉の脂には、血液中の中性脂肪やLDLコレステロールを増やす「飽和脂肪酸」が多く含まれており、摂り過ぎに注意が必要です。一方で、青魚の油に含まれる「不飽和脂肪酸」は、内臓脂肪の大部分を占める中性脂肪を低下させる働きがあります。
夜間は、脂肪の合成を促す時計遺伝子(BMAL1:ビーマルワン)が活性化します。夕食に多くのエネルギーを摂取すると、余分なエネルギー源は脂肪として蓄えられやすいのです。
内臓脂肪を減らすために、積極的に献立にとり入れたい食べ物をご紹介します。
血中の脂肪を減らす働きを持つ「不飽和脂肪酸(DHA・EPA)」が豊富です。
エネルギー量が少ないうえに、糖質や脂質の吸収を抑える「食物繊維」が含まれています。食前に食べるのがおすすめです。
大豆製品に含まれる「大豆イソフラボン」は、脂肪の蓄積を抑えて、脂肪の燃焼を促進する働きがあります。
ココナッツオイルには、およそ60%の「中鎖脂肪酸(MCT)」が含まれています。中鎖脂肪酸(MCT)は、BMIが高めの方の体脂肪やウエストサイズを減らす効果が報告されている成分です。一般的な油と比較しておよそ4倍も速くエネルギーとして消費されます。
外食やコンビニエンスストアでは、好きなメニューを選びがちなので、栄養バランスが崩れやすいです。栄養バランスを整えて内臓脂肪を減らすために工夫したいポイントをご紹介します。
精製された白米や小麦のパン・麺は、未精製の穀類に比べて血糖値が上がりやすく、脂肪を蓄えやすい性質があります。外食やコンビニのメニューでは、完全に精製されていない雑穀米や玄米、全粒粉のパンや麺を使ったメニューを選びましょう。
「もう1品ほしい」そんな時は、ヘルシーな副菜で満足感を上げましょう。もずく酢・納豆・冷奴・枝豆といったヘルシーなメニューが冷蔵庫に常備してあると心強いです。
血中の脂肪を増やす働きのある「飽和脂肪酸」が多い肉よりも、血中の脂肪を減らす働きのある「不飽和脂肪酸」が多い魚のメニューを選びましょう。
食前に食物繊維を摂取するために、野菜類やキノコ類がメインのメニューを1つ以上選びましょう。お浸しやナムル・キムチといったメニューがおすすめです。
内臓脂肪を減らすには、普段の生活で「摂取エネルギー<消費エネルギー」の状態にする必要があります。毎日の食事では、肉よりも魚や大豆製品を意識的にとり入れたり、野菜を先に食べたり、ココナッツオイルを食事にとり入れたりと工夫をしてみましょう。
食事だけでなく、運動や活動量を増やして、エネルギーの消費量を増やす努力も大切です。ぜひ、食事と運動の見直しで、ポッコリお腹をスッキリさせましょう。
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