看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
PMSは月経前に現れるココロやカラダの不快な変化です。月経前にイライラしたり、不安になったりする人はPMSの可能性があります。
程度の重い人は、人間関係に影響を及ぼす場合もあるPMS。なぜ、そんな状態になってしまうのか?原因や現れやすい時期がわかれば、自分での対策が可能です。月経と女性ホルモンとの関係、月経周期を知る方法、PMS期間の過ごし方や病院に行くべきかどうかの判断ポイントについて、詳しく解説していきます。
PMSは、月経前に現れるココロとカラダの変化です。「自分もPMSなのでは?」と思ったことがある方も多いでしょう。
まずは、PMSの定義や原因を確認しておきましょう。
PMSは、「月経前3~10日の黄体期の間に続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消退するもの」と定義されています。
月経前に、イライラや落ち込みなどのココロの変化や、乳房や腹部のはり・むくみなどのカラダの変化が現れるのが特徴です。
初めて月経を迎える10代から閉経を迎える50代までの人が悩み、ピークは30代といわれています。
PMSの原因は、実はまだはっきりわかっていません。さまざまな原因が考えられており、さらに原因はひとつとは限らず、いくつもが影響し合い起こるとされています。
現在、考えられるおもな原因は次の3つです。
排卵から月経までの2週間に、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少し発症する説です。
PMSは脳内の神経伝達物質であるセロトニンとの関係が示唆されています。セロトニンは、気分を明るくする、ココロを穏やかにするなどの働きがあります。エストロゲンが減少するとセロトニンの働きが低下し、「イライラする」「気力がわかない」などの変化につながると考えられるのです。
交感神経は、ココロとカラダを緊張させ、副交感神経はリラックスさせる働きがあります。PMSが現れる人は、月経前に交感神経が活発になり、副交感神経が弱まると考えられているのです。さらに、ストレスがあるとPMSが現れやすくなるとする説もあります。
PMSの現れ方には個人差があり、一説では200種類以上あるといわれています。代表的なココロとカラダの変化、PMSかどうか見分けるポイントについてみていきましょう。
カラダには、次の変化が見られる場合があります。
ココロには、次の変化が見られる場合があります。
ココロとカラダの変化がPMSかどうか見分けるポイントは、次の3つの点です。
2か月にわたり、周期的にココロとカラダの変化がみられる場合は、PMSの可能性が高いでしょう。
PMSや月経に関わる変化は、どの程度の人が感じているでしょうか。
内閣府の調査によると、20代から30代の7~8割が月経に関する何らかの変化を感じ、3割近くの人がPMSの変化を感じています。
毎月の月経は女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンによりコントロールされています。ふたつのホルモンの働きや月経周期との関係を紐といていきましょう。
エストロゲンは「女性らしさ」、プロゲステロンは「妊娠の維持」に関わっています。ふたつの女性ホルモンの、それぞれおもな働きを確認しておきましょう。
およそ28日周期で訪れる月経は、女性ホルモンの働きで起こります。月経周期は「卵胞期」「排卵期」「黄体期」「月経期」の4つに分類され、女性ホルモンのバランスが変動します。
PMSは月経前の黄体期に起こるため、タイミングがわかれば自分での対策が可能です。今どの時期にあるのかを知るには、基礎体温を測定しましょう。
基礎体温とは、生命を維持するために必要な最小限のエネルギーしか消費していない、安静時の体温です。
測定は朝目覚めたら、横になったまま行います。寝る前に枕元に婦人体温計を準備しておきましょう。「舌の下」に体温計の先端をはさみ測定します。測定したら忘れないように記録しましょう。
PMSの対策では基礎体温の変化を把握しましょう。
基礎体温は女性ホルモンの変動により変化します。月経のある女性の体温は通常「低温期」と「高温期」の二相になり、一定の周期で繰り返されています。月経期から排卵日までの2週間は低温期が続き、排卵後は体温が上昇し2週間高温期が続くのです。
PMSが現れる時期は高温期である「黄体期」と重なるため、基礎体温の計測でタイミングがわかるようになります。毎月のリズムがわかれば、自分の変化とうまく付き合っていけるでしょう。また、妊娠や月経の異常にも気づけます。
PMSの期間をよりよく過ごすためにはセルフケアが大切です。セルフケアで改善しない場合は婦人科の受診を検討しましょう。対策をひとつずつみていきます。
自分でできるケアは、PMSダイアリーをつける、バランスのとれた食事をする、軽い運動をするなどがあります。
毎日基礎体温とカラダの変化を記録するようにしましょう。月経周期のいつごろ起きやすいかがわかるため、対策がとれるようになります。最近はスマートフォンで管理できるアプリもあります。自分が行いやすい方法で管理してみてください。
バランスのよい食事をしましょう。栄養が偏らないよう、さまざまな食材を食べるようにします。塩分のとりすぎは、むくみにつながる可能性があるので注意してください。カフェインの入っている飲み物も避けましょう。
PMSの程度は人それぞれ。横になっていたいと思う人も多いでしょう。つらいときは無理しないで大丈夫です。しかし、軽い運動が効果的な場合もあります。軽く散歩をしたり、外に出て深呼吸したりしてみましょう。いつもと違う道のりで通勤してみるのもいいですね。景色が変わるだけでも違います。
PMSの期間はココロとカラダの疲れをためないようにしましょう。ぬるめの湯でゆっくり入浴したり、マッサージしたりして自分をいたわってください。音楽を聴く、アロマテラピーでゆったりした時間を過ごすなどもいいでしょう。
セルフケアでつらさが改善しない場合は、かかりつけの婦人科を受診しましょう。婦人科での対応は生活指導、カウンセリング、薬剤の使用が主な対応になります。
月経前に、どの程度ココロやカラダの変化があるのか、日常生活に及ぼす影響について確認されます。基礎体温の変化がわかると医師との話もスムーズにすすむので、ぜひPMSダイアリーを持参しましょう。
血液検査でホルモンの状態や他のカラダの状態がわかります。内診は医師の考えにより異なりますが、一般的には少なめです。初めての婦人科受診で不安な人は、受付で話しておきましょう。
生活改善のための栄養や運動について説明を受けます。バランスのよい食事はとれているか、運動や睡眠は適切かをチェックし、改善すべき点を指導してもらえます。
ココロとカラダの状態にあわせ、薬が処方されます。たとえば、むくみに対してはむくみ改善薬、吐き気には吐き気止め、ココロが不安定なときは精神安定剤などです。漢方薬や低用量ピルなどが使用される場合もあります。何が一番つらいか、医師によく話すようにしましょう。
参照:女性の健康包括的支援のための診療ガイドブック/厚生労働省研究班
PMSは、「みんなもつらいはず」と我慢してしまう人もいるかもしれません。
しかし、現れ方やつらさは人それぞれ。無理をしないようにしましょう。基礎体温の測定を習慣化し、変化が現れるタイミングがわかれば、予測し、自分にあった対策をとれるようになります。もし、セルフケアで改善しない場合は婦人科を受診しましょう。
PMSは真面目で几帳面な人がなりやすいとの説もあります。すぐには難しいかもしれませんが、おおらかな気持ちを持つ工夫も大切です。
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