監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
風邪は、ひき始めの対処が肝心です。初期に出やすい症状の代表例といえば、喉の痛み。症状があらわれた場合は、早めに喉をケアして、早期回復を目指す行動を心がけましょう。そのまま放置してしまうと、風邪をこじらせてしまうケースも少なくありません。
風邪のひき始めに出やすい症状や、こじらせた場合のリスク、早期回復が期待できる具体的な対処法について解説します。風邪が原因で健康を損なわないように、参考にしてください。
寒く空気が乾燥する冬や寒暖差が激しい季節、季節の変わり目は、風邪の流行に加えて、免疫機能の低下などの要因が重なって風邪をひきやすくなります。
風邪は、喉や鼻といった上気道に生じる急性炎症の総称です。ウイルスや細菌などの病原体の感染により引き起こされますが、多くの場合はウイルスが原因とされています。
風邪をひかないように、体に病原体を寄せつけない予防は大切ですが、いざひいてしまったときの早めの対処も大事です。こじらせてしまうと、思わぬ合併症を併発するリスクがあるからです。
もし、以下の症状がみられたら、風邪のひき始めかもしれないので、早めに対処しましょう。
喉の粘膜にウイルスが侵入して増殖すると、咽頭や扁桃に炎症が起きます。炎症が起きると、喉がイガイガしたり、唾液や飲食物を飲み込む際に痛みを感じたりするでしょう。
鼻の粘膜にウイルスが侵入すると、粘膜の神経が刺激され、異物を外へ追い出そうとしてくしゃみが出ます。また、粘膜が刺激されると粘液の分泌量が増えて鼻水が出てウイルスの排出がさらに促されます。
ウイルスが体内に侵入すると、ウイルスに対抗するための物質が分泌されるようになります。この物質は、体温を上昇させて免疫機能を高める働きがあるため体温が上昇するのです。寒気や震えが生じるのは、体温が上昇するときの体の反応です。
ウイルスを排除するための免疫システムにエネルギーを使うため、体力を消耗してだるさを感じます。体温上昇のために発熱し、頭がぼーっとする場合もあるでしょう。
だるさや喉の違和感、くしゃみは、風邪の引き始めにあらわれやすい症状です。症状が出た場合は、悪化を防ぐためにも免疫機能を維持する意識を持ちましょう。
免疫機能が低下していたり、風邪のひき始めの対処を怠ったりすると、風邪をこじらせるリスクが高まるでしょう。風邪をこじらせやすい体の状態や、風邪をきっかけに引き起こされる病気について解説します。
関連記事:【医師監修】風邪が治るまでの過程とは?症状に合わせた対策・食事・お風呂の注意点をそれぞれ解説免疫機能が低下すると、風邪をひきやすく、こじらせやすくもなります。以下の生活習慣や体の状態に当てはまる方は、免疫機能が低下している可能性があるので注意しましょう。
風邪をこじらせると、上気道以外の器官にまで炎症が拡がって、重症化してしまう可能性もあるでしょう。また、喉や鼻の粘膜が炎症を起こし、弱った状態が続くと、他の細菌感染症にかかってしまうリスクもあります。
風邪が原因で引き起こされやすい、以下の病気に注意しましょう。
炎症が肺にまで広がると、肺に炎症を生じて肺炎を引き起こす可能性があります。胸に痛みを感じたり、呼吸困難など重篤な症状が現れることもあります。特に子どもや高齢者は肺炎を併発すると命に関わるケースも多いため注意が必要です。
風邪は、気道の中でも体の入口に近い鼻や喉(上気道)の炎症を指します。気道の奥にある気管支にまで炎症が起きる場合は気管支炎と呼び、痰が絡む、咳が止まらないといった症状を引き起こすのが特徴です。また、気管支の炎症は喘息を悪化せるリスクとなり、呼吸困難に陥る場合があります。
ウイルスが耳に侵入すると、耳の鼓膜の奥にある中耳に炎症を生じる場合があります。耳の痛みや耳の違和感、難聴といった症状につながる恐れもあるでしょう。
鼻の周りの空洞部分である副鼻腔に、炎症が起きる病気です。鼻が詰まって頭がぼーっとする、息苦しさを感じる、顔に痛みを感じる、においがわかりづらい、といった症状があらわれます。
風邪のひき始めに出やすい症状の代表といえば、喉の痛みや違和感です。症状が出た場合は、早めに喉をケアして悪化を防ぐ行動をとれば、早めに回復する可能性が高まるでしょう。
風邪のひき始めに喉の症状が出たら、以下の対処方法を試してみてください。
うがいには、殺菌作用や喉の乾燥を防ぐ作用があります。喉の粘膜が乾燥するとウイルスなどの病原体が入りやすくなり、さらに痛みを引き起こす場合もあるため注意が必要です。
唾液には、粘膜保護や抗菌の役割があり、喉の炎症の改善に役立ちます。耳たぶの前の上奥歯あたり(耳下腺)や耳の下からあごの奥のあたり(顎下腺)、あごの下(舌下腺)を、両手で押し上げたり揺らしたりしてみましょう。唾液の分泌を促してくれます。
免疫機能を高めるために、体を温めて体温を上げましょう。ただし、汗をたくさんかくと脱水になる可能性があります。水分はこまめに摂るようにしましょう。
体をじんわり温めるには少しぬるめのお湯にゆっくりつかるのがおすすめです。
空気が乾燥している部屋で過ごすと、風邪で炎症を起こしている喉や鼻の粘膜が傷つきやすくなります。加湿器や濡れタオルなどを使用して、部屋を加湿しましょう。
水分補給には、喉の乾燥を防ぎ、粘膜を保護する効果があります。風邪をひくと鼻水や発熱の影響で水分が失われやすいため、汗をかいていなくてもこまめに水分を補給しましょう。
食欲がないときは無理にしっかりと食事を摂る必要はありません。しかし、風邪をひいているときはエネルギーも消耗しやすいため、少しでも口にできるものを摂るとよいでしょう。食欲がある場合は、消化によい食べ物をバランスよく食べましょう。体を温めたり炎症を抑えたりする効果が期待できる、生姜やウコンなどを摂取するのもおすすめです。
風邪をひいたときに、市販薬を使うか、病院を受診するかで悩む方は多いでしょう。
風邪の症状が出て早く治したいときに、市販の風邪薬を使用すべきかどうかは、判断が難しいところ。市販の風邪薬も風邪への処方薬も、症状を緩和させる対症療法に使用する薬です。ウイルスの撃退に直接役立つわけではないのです。解熱剤や熱を下げる作用のある風邪薬を服用すると、体温が下がって免疫機能も低下しやすくなるため、症状は楽になっても風邪が長引く可能性があります。しかし、症状がひどい場合は、市販薬を使用してぐっすり眠った方が効果的なケースもあるでしょう。
発熱した際、症状を抑えるのが早期回復につながるとは限りません。とはいえ、症状が辛いと感じるときや、病院へ行けないときには、市販薬を使用するとよいでしょう。
また、殺菌作用のあるトローチやうがい薬の使用もおすすめです。
通常、風邪は1週間程度で自然に治ります。もしも1週間以上症状が続いたり、咳が出続けたりしたら、病院を受診した方がよいでしょう。他にも、「市販薬で辛い症状が改善しない」「自力で食事がとれない」「今までに感じたことのない症状が出ている」「持病があるため風邪の影響が心配」といった場合には、病院を受診すべきです。
判断に迷うときには、風邪をこじらせてしまう前に病院の受診を推奨します。
ウイルスが原因となる風邪は、身近な病気でありながら、基本的に根本的に治すための薬はありません。そのため、ひき始めの対処が肝心です。一番簡単な風邪への対処方法は、温かくしてよく眠ること。迅速に対応して2~3日で快方に向かえば問題ないですし、なかなか治らない場合には病院へ行きましょう。風邪のひき始めの喉や鼻の違和感を見逃さないように注意し、こじらせないように気をつけてください。
風邪の多くはウイルス感染によって引き起こされます。通常は3日程度で自然に回復しますが、放っておくと重症化する場合があるため注意が必要です。
風邪をひいたと感じたら、まずはゆっくり体を休めて今回ご紹介した乾燥対策などを行いましょう。症状がつらいときは市販薬を使用するのもおすすめです。
しかし、症状が3日以上続く場合や、強い症状が出ている場合には医療機関を受診してください。
なお、風邪はウイルスなどによる感染症の一種です。症状が軽い場合でも周囲に感染を広げる可能性があります。風邪をひいたときは、手洗いやマスクの着用といった基本的な感染対策を徹底しましょう。また、症状はあるときは人混みは避けてください。
同じように、風邪が流行している時期は誰にでも周囲の人から感染するリスクがあります。適切な感染対策でウイルスの侵入を抑えましょう。
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