監修医師檜森 紀子
東北大学病院眼科所属。東北大学眼科助教。
プロフィール:東北大学医学部眼科教室・プロフィールページ
目の健康を保つためには、「目によいこと・悪いこと」を理解しなければなりません。パソコン・スマホの使いすぎや偏った食事、紫外線のあびすぎといった、日常生活で目の負担となる原因はたくさんあります。しかし、作業環境や食生活、睡眠などを見直せば、改善の余地は十分にあるでしょう。目に意識を向けると、生活習慣病の早期発見にもつながります。目の健康のために、今日から行動してみませんか?
目に悪いとされる原因は、大きく分けて「行動・生活習慣」と「生活習慣病」による影響の2つです。「最近、目の調子がよくない…」といった方は、まず目に悪い習慣がついていないか行動を振り返ってみましょう。
目に悪い影響を与えやすい習慣といえば、パソコンやスマホの使いすぎです。なぜ、電子機器がそれほどにダメなのでしょうか。ほかの原因も含め、詳しく解説していきます。
パソコンやスマホが目に悪い影響を与えやすい理由は、画面を長時間見続けると目に負担がかかるためです。目にはピントを合わせるための筋肉があります。普段は緩んでいるのですが、間近の画面にピントを合わせ続けるとなると、ずっと緊張が走ったままになるのです。じきに疲労が蓄積し、老眼と似た状態にも陥りかねません。
また、画面から出るブルーライトや明るすぎる画面は、睡眠を妨げる一因にもなります。
飲酒や喫煙も、目に悪いとされる習慣のひとつです。お酒の飲みすぎは視神経に影響を与える場合があり、タバコの吸いすぎは生活習慣病を引き起こしかねません。厚生労働省のガイドラインを元にすると、飲酒量が増えるにつれ、発症リスクが高まると考えられます。お酒はほどほどが目安です。
参考:「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン/厚生労働省」「揚げ物を好んで食べる」「コンビニご飯ばかり」といった偏った食事も、目に悪い影響を与えかねません。目の健康を保つためには、バランスのよい食事が必要不可欠です。過剰な偏食は、急な視力低下も招きかねません。たくさん食べていたとしても、目に必要となる栄養素がとれていなければ意味はないのです。しかし、生活するなかで、どうしても不足しがちな栄養素もあります。偏りをできるだけ少なくするためには、バランスのとれた食事が欠かせないといえるでしょう。
心身を揺さぶりやすいストレスは、目に悪い原因にもなり得ます。ストレスがかかると、知らず知らずのうちに呼吸が浅くなりがちに。深呼吸できていないと血の巡りが悪くなり、目のまわりの筋肉や機能にも問題が出やすくなります。
じつは、紫外線も目によくない影響を与えるひとつです。太陽光をあびるのは健康によいとされていますが、紫外線は目の病気を引き起こすリスクもあります。
体内リズムを整えようと太陽光をあびるときには、紫外線対策も十分に心がけましょう。
「規則正しい生活をしているのに、目の調子がよくならない…」なら、生活習慣病が影響している可能性もあります。生活習慣病と目は、つながりが深くないと思うかもしれません。しかし、高血圧や糖尿病などの症状によっては、目の出血や著しい視力の低下、視力を失うケースもあります。
目の不調は気づきにくく、単なる疲労と決めつけがちです。生活習慣病が原因の場合、対処が遅れると取り返しのつかない事態にも発展しかねません。たかが目の不調と思わず、おかしいなと思ったら、医療機関を受診しましょう。
目によい行動をするなら、まず見直したいのがパソコン・スマホの使い方です。パソコンやスマホ自体が悪いわけではありませんが、使い方や設定が間違っていると、目に負担がかかりやすくなってしまうのです。目の負担を減らすための4つの工夫をご紹介します。
パソコンやスマホを使う際に、気をつけたいのが姿勢です。やや猫背がちで画面を長時間見ていると血行が悪くなりやすく、肩や背中がこりやすくなってしまいます。スマホの場合、寝転がった状態で画面を見ると両方の目で距離に違いが出て、左右で視力の差が生まれかねません。自分に合った机やイスを用意し、正しい姿勢で作業するのがベストです。
目の負担に直結するのが、画面の明るさと距離です。ブルーライト対策のために画面はやや暖色寄り・暗めにし、目と30~40cmほど距離があくようにしましょう。明るさの目安を知りたいときは、白のコピー用紙などと比較するのがおすすめ。
また、就寝前のスマホはなるべく控え、光をあびないようにするのも対策のひとつです。
パソコンの画面は、正面から見たときに視線がやや下向きになるように置きましょう。作業に没頭すると、ただでさえまばたきが少なくなりがちです。目を乾燥から守るためにも、やや目を伏せて画面を見る体勢をとってみてください。画面を低めに置くとともに、まばたきを意識しましょう。
パソコンやスマホを使うときは、1時間以内に1回休憩をとるのが好ましいです。厚生労働省では、1時間以内に10~15分程度の休憩を推奨しています。休憩するときは目を閉じたり、遠くをぼんやり見たりして、ピント調節筋を緩めてあげてください。
参考:「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン/厚生労働省」生活のなかで意識すべきなのは、正しい食事と睡眠です。バランスのとれた食事と十分な睡眠をとったうえで、目のまわりを温めたり筋肉を緩めてケアしてあげてください。
「アントシアニン」は、ブルーベリーやナスなど、紫色の食べ物を中心に含まれる栄養素です。「ルテイン」は目のなかにある水晶体に元々存在していますが、体内では合成できず、年齢とともに減少してしまいます。ほうれん草やニンジンを積極的にとると効果的です。
また、「リコピン」はトマトやすいかをはじめとする赤色の食べ物、「アスタキチンサン」はサケ(いくら)やエビ、「DHA」は青魚などに含まれています。
目によいとされる代表的な栄養素を以下にまとめましたので、目の健康を意識するなら、積極的に食事に取り入れてみましょう。
寝不足で朝起きると「目が痛い」「目が充血している」といった経験はありませんか?十分な睡眠は、目の機能を正常に保ってくれます。逆に、睡眠不足になると目の機能が低下し、目の乾きや疲れといった不調を引き起こしかねません。
厚生労働省によると、成人が目安とする睡眠時間は6時間以上です。しかし、6時間を切らなければ、日中に多少の不調を覚えてもよいわけではありません。ライフスタイル・年齢・季節性の要因も加味したうえで、健康的な状態を維持できる時間をさぐってみてください。
「目が疲れた」「よく目を使った」と感じるときは、以下の2点を生活に取り入れてみてください。
目のまわりを温めると、血の巡りがよくなります。ホットタオルやアイウォーマーで目の上にのせて、縮こまった筋肉をやわらげましょう。ただし、目の痛み・充血があるときは、冷やすのが基本です。目の状態にあわせてケアしてあげてください。
スマホやパソコン作業で酷使した目は、眼球のストレッチや目のまわりのマッサージが有効です。画面から目を離し、眼球を上下左右に動かしたり、目を閉じたり開け
パソコンやスマホの作業環境を整えたり、食事・睡眠を見直したりするほかにも、目に悪い生活習慣をカバーする手段はあります。なるべくストレスを溜めない、画面を見ている時間が長いときは目薬をさす、UVカットの眼鏡やコンタクトを装用するなど、工夫次第で目にやさしい生活をおくれるのです。
「セルフケアだけでは不安」「目に不調が出やすいんだけど…」といった方は、定期的に眼科を受診してみてください。目は常日頃から使っているため、とくに症状がないときでも定期健診を欠かさないのがポイントです。生活習慣病の早期発見のためにも、セルフケアと眼科受診を怠らず、目の健康を保ちましょう。
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