監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
手荒れを予防するためには、正しい原因と対策を知る必要があります。不快なかさつきの主な原因は乾燥です。水仕事をする機会が多い美容師や、アルコール消毒を頻繁に行う看護師は、常に手荒れトラブルと隣り合わせといえるでしょう。日頃から洗剤に触れる機会が多い主婦も手荒れに悩まされている方は多いでしょう。しかし、お湯や水を避けきれないからといって、あきらめるのは早いです。「ハンドクリームでのアフターケア」と「刺激の少ない手洗い」をぜひ実践してみてください。
手荒れが起こる主な理由は、肌のバリア機能が低下するためです。バリア機能とは、肌を健やかに保つための機能を指します。バリア機能が正常に働いていれば、肌はうるおいで満たされた状態です。しかし、バリア機能が低下すると肌は外部からの刺激にさらされてしまいます。
肌のバリア機能が低下する原因は多岐に渡りますが、最も多いのは肌の乾燥です。
肌が乾燥すると表面にある角質層の構造が乱れて内部のうるおいがどんどん逃げ、「かさつき」や「乾燥感」といった、肌荒れの症状につながってしまうのです。
手が乾燥しやすい状況におかれている人は、手荒れに悩みやすくなります。とくに、水仕事やアルコール消毒は、手指に必要なうるおいまで洗い流しかねません。手が乾燥しやすい人の特徴をチェックしてみましょう。
手荒れしやすい人の代表が、水仕事をする機会が多い人です。主婦など頻繁に食器洗いや掃除をする人、お客さんの髪を洗う美容師や、衛生上、手洗いが義務付けられている飲食業の人が挙げられます。
ただの水も、常にあびれば刺激物になります。シャンプーやカラー・パーマ液、食器洗い洗剤の刺激が追い打ちをかけ、手荒れに発展するケースも少なくありません。
特に洗剤などの成分にアレルギーがある人は手荒れが起きやすいため注意が必要です。
アルコール消毒が欠かせない人も、手荒れしやすいと考えられます。看護職や介護職、調理職の方が該当するでしょう。
消毒液に含まれる成分や摩擦が手に外部刺激を与え、アルコールが手指の油脂を奪ってしまいます。また、手にまとわせたアルコールが揮発するときに、肌の水分が急速に奪われてしまうのも、乾燥による手荒れの一因です。
段ボールをよく触る事務職や配送業の人も、手荒れしやすいと言えます。
紙でできた段ボールは、手指の油分を奪いがち。段ボールとセットで使うガムテープの粘着部分も、皮脂を奪いかねないので要注意です。また、すでに乾燥した手指で段ボールに触れると、摩擦によって状態が悪化するおそれもあります。
摩擦の観点からいうと、キーボードを叩く時間が長いデスクワークの人や、手で楽器を演奏するピアノ奏者の人も、手荒れしやすいと考えられるでしょう。
手荒れの予防に努めるときは、「手指をいかに乾燥させないか」を考えてみてください。外部刺激を避ける対策や、水に触れる頻度の見直しがカギとなります。また、水やお湯に触れたあとは、とくに乾燥しやすい状況下のため、アフターケアの徹底も大切です。
まず、水仕事の際は、熱いお湯を使わないようにしましょう。熱いお湯は肌表面にある皮脂膜を溶かし、角質内にある保湿成分を流し出してしまいます。寒い冬はついお湯を使いがちですが、うるおいを逃がさないためには、熱すぎない40℃前後のぬるま湯に設定しましょう。
水や食器洗い洗剤といった、物理的刺激から手指を守るためには、ゴム手袋の着用がおすすめです。しかし、天然ゴムはアレルギーを引き起こしかねません。一般的なゴム手袋で手が荒れてしまう際には、合成ゴム製のニトリル手袋を選んでみてください。すでに手荒れがひどい人は、使い捨てのニトリル手袋に、綿製の手袋を一枚仕込むとよいでしょう。
手荒れを防ぐためには、石けんやハンドソープを使いすぎない心がけも大切です。油分が奪われすぎてしまったり、必要以上に摩擦が起こったり、手指に残った泡が肌にダメージを与えて肌荒れを引き起こしたりする可能性があります。各商品に記載された「適量」を心がけましょう。
石けん・ハンドソープを適量とったら、手をやさしくこすり合わせて洗いましょう。手洗いのポイントは、以下のとおりです。
手洗い後は、すみやかにハンドクリームを塗ってください。保湿成分リッチなハンドクリームは、乾燥しがちな手洗い後の手をうるおいで包んでくれます。香り付きのアイテムなら気分をリフレッシュさせてくれるので、荒れた手にガッカリする気持ちもやわらげてくれるでしょう。
手荒れの主な原因となる乾燥を防ぐためには、ハンドクリームによるこまめな保湿ケアが重要です。とはいえ、大量に何度も塗ればいいわけではありません。使用タイミングを含め、適切な塗り方を心得ておきましょう。
ハンドクリームは1日に数回、乾燥しているところに適量を塗るのが基本です。症状や商品にもよりますが、1日に3~5回程度、使用量は人差し指の指先から、第1関節までの長さを目安にしましょう。
しかし、場合によっては手がすべって作業しにくくなるかもしれません。シーンと状態に合わせて調整しましょう。
ハンドクリームを塗るときは、事前に手を洗って、汚れや古い角質を取り除いておくのがポイントです。手に余分な汚れが付いていると、ハンドクリームが十分に行き渡りません。手が清潔になったあとは、手のひらを合わせてハンドクリームを温めたうえで、指1本1本や指の間にまでしっかり塗り広げましょう。より角質層まで浸透しやすくなります。
ハンドクリームを使用するべきタイミングは、水仕事や手洗い、アルコール消毒のあとなどです。長時間ケアできない就寝前や起床時も、塗っておくのをおすすめします。ほかにも、「乾燥が少しでも気になったとき」と覚えておくとよいでしょう。
いくらセルフケアしても手荒れがひどくなるなら、医療機関(皮膚科)を受診してみてください。放置してしまうと、症状がさらに悪化しかねません。受診すべき目安は、強いかゆみ・皮めくれの症状があるとき、ひび割れや亀裂によって強い痛みがあるとき、湿疹ができて治らないときなどです。
手荒れの原因が、乾燥ではなくアレルギーの可能性もあるため、何に反応しているか詳しく知る必要があります。少しでも不安要素があるなら、一度皮膚科を受診してみましょう。
空気が乾燥しやすい秋から春にかけて、手の肌荒れに悩まされる方は少なくないでしょう。
特に主婦や美容師など日常的に水仕事をする方は、肌のバリア機能が損なわれやすく手荒れを生じやすいため注意が必要です。
乾燥による肌荒れは今回ご紹介したようなセルフケアで改善するケースがほとんどです。一方で、洗剤によるアレルギーなどが原因の場合や重度な肌へのダメージがある場合にはステロイドの塗り薬などを用いた治療をしなければ治らない場合があります。
セルフケアをしても症状が改善しない場合やハンドクリームなどによるセルフケアで強い刺激を感じるような場合にも医療機関への受診を検討してください。
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